展覧会情報Exhibition Information

開催中の展覧会Current Exhibition

年末恒例となった、国宝「雪松図屏風」の公開にあわせ、今回は雪松図と同様に三井家で珍重された、中国絵画や墨蹟・古拓本を展示いたします。祝いの席や特別な茶会を彩った、趣深い書画の数々をお楽しみいただきます。また、江戸時代の画家による鑑定書や、作品を納める箱なども併せて展示します。作品を愛でた所蔵者たちの思いや、収集に至るまでのストーリーにもご注目ください。

出品目録

展覧会の趣旨

江戸に店を構え、京を本拠地とした豪商の三井家は、自らがパトロンとして支援した円山応挙(まるやまおうきょ)やその弟子の絵画を多く蔵していました。当館の絵画コレクションの筆頭である円山応挙筆 「雪松図(ゆきまつず)屏風」(国宝)は、京を代表する画家の名作として、幕末維新・震災・大戦の戦禍と幾多の困難を潜り抜けて、今日まで守り伝えられています。

そうした日本の絵画にくわえ、北三井家を筆頭とした各家においては、茶の湯の美意識に則った墨跡や、中国の宋〜元代の画家の名を冠した絵画もまた、歴代にわたって珍重されました。また、近代の新町(しんまち)三井家においては、9代当主・高堅(たかかた)が中国の古拓本の名品を盛んに収集し、それらは現在、聴氷閣(ていひょうかく)コレクションとして世界的に知られています。本展では、それらの北三井家・新町三井家旧蔵品を中心として、雪松図屏風と同様に、歴代にわたり珍重された中国の絵画や書および、それらに倣って日本で描かれた作品を紹介いたします。

くわえて、一部の作品については、江戸時代に記された鑑定書など、付属する資料と併せて展示いたします。作品の美しさと同時に、その作品がどのように受容されたかという「鑑賞の歴史」をも含めて、雪松図屏風とともに守り伝えられた数々の書画へ、思いを馳せていただければ幸いです。

なお、本展は東京国立博物館、台東区立書道博物館にて開催される展覧会「拓本のたのしみ」との連携展示となります。本展で展示されない当館蔵の古拓本の一部については、2025年1月4日〜3月16日の日程で、台東区立書道博物館にて展示される予定です。

展示構成と主な出品作品

古拓本とその収集家

現在当館が所蔵する拓本はほぼ、新町三井家9代・三井高堅(たかかた)(1867-1945)の旧蔵品からなります。高堅は三井銀行の取締役社長等、関連会社の重役を歴任する傍らで、古書画、とりわけ宋拓(そうたく)唐拓(とうたく)といった古拓本の収集に力を注ぎました。それらは今日、高堅の号を冠して「聴氷閣本(ていひょうかくぼん)」と呼ばれ、世界屈指の拓本コレクションとして知られています。

これらの拓本の中には、旧蔵者を調べていくと中国の王室であったり、当代の一大収集家であったりと、高名なコレクターに行き着くものが散見されます。本章ではその中から、中国・明時代の安国(あんこく)項元汴(こうげんべん)といった、斯界でよく知られた一大収集家の旧蔵品に焦点を当て、高堅が手にする以前の来歴に注目しつつ、名品を紹介いたします。

北三井家旧蔵の書画

円山応挙筆「雪松図屏風」は、応挙の作品で唯一の国宝であり、当館の絵画コレクションを代表する作品です。十一家ある三井家のうち、応挙と特に深く交わった惣領家・北三井家の注文品とされ、同家において守り継がれてきました。江戸時代の北三井家の記録からは、同家が応挙に限らず、古今の日本・中国絵画を所蔵していたことが知られますが、茶の湯に親しんだ影響からか、宋~元時代の中国絵画が多くみられます。その中には現在の館蔵品と思しき作品も複数見出すことができ、江戸時代の京の町人の美意識を垣間見ることができる点で、貴重と言えるでしょう。

本章では雪松図屏風を中心に据え、同作と共に北三井家へ伝わった中国絵画・書を紹介します。

  • 作品画像作品画像
    国宝 雪松図屏風 円山応挙筆
    江戸時代・18世紀図3
    雪の部分を塗り残すことで、紙の白と水墨の黒のみで雪を被った松を描く。円山応挙の代表作として知られるが、本図が描かれた経緯は未だ明らかとなっていない。しかしながら、本作に用いられた継ぎ目のない大判の紙は当時、非常に貴重であり、それがこうした美麗な状態で現在まで伝えられているという事実は、雪松図が三井家にとって特別な作品であったことを想像させる。
書と墨跡

鎌倉時代の禅僧・栄西が中国へ渡り、禅宗とともに喫茶の習慣を日本に持ち帰ったことから、茶の湯の世界においては「墨跡」、すなわち禅僧による書が珍重されてきました。茶会における墨跡の使用については、侘茶の精神と禅宗の精神とに共通性が見出されたことを一因とするとの指摘もあり、単に見て楽しむだけでなく、高僧の遺物として時に尊崇の対象となったことも特徴です。そうした書画が高名な茶人や大名に愛玩されることで、歴代の所蔵者にまつわる逸話が付随し、時にそれは誇張されることすらありました。

本章では禅僧の墨跡や、中世の禅僧が愛好した中国宋~元時代の書家の作と伝わる書を中心に、伝来にまつわるエピソードを交えつつ紹介いたします。

名物絵画の世界

古代から中世において、天皇家や将軍家で所有された器物のうち、特に優れたものは「名物(めいぶつ)」として他の器物と区別されていました。この「名物」という言葉は、時代が下ると、それに匹敵する鑑賞性・市場価値を備えた茶道具や刀剣にも用いられ始め、「千家名物」など所有者の名を冠して呼ばれるようにもなります。

当館の所蔵品には、出雲国松江藩10代藩主であり大名茶人の松平不昧(まつだいら ふまい)治郷(はるさと)、1751-1818)の旧蔵品、通称「雲州名物(うんしゅうめいぶつ)」の絵画が複数含まれており、それらはいずれも新町三井家によって、昭和の初め頃に収集されたものです。これらの作品を納める箱には、取引時の領収書、古美術商からの手紙といった文書が多く付属しており、コレクションの歴史をひもとく上での重要な資料となっています。

本章では館蔵品の中から、この「雲州名物」と、徳川幕府の旧蔵品である「柳営御物(りゅうえいごもつ)」に焦点を当て、付属資料とともに展示します。この他にも、伝来にまつわる興味深い情報を含む作品を併せて展示し、鑑賞・愛玩した人々の歴史に注目します。

会期
2024年11月23日(土・祝)~2025年1月19日(日)
開館時間
10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日(但し1月13日は開館)、年末年始12月27日(金)~1月3日(金)、1月14日(火)
主催
三井記念美術館
入館料
一般 1,200(1,000)円
大学・高校生 700(600)円
中学生以下 無料
  • ※70歳以上の方は1,000円(要証明)。
  • ※20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。
  • ※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は( )内割引料金となります。
  • ※障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)。
音声ガイド
音声ガイドで分かりやすく解説いたします。(貸出料 650円/1台)
入館
予約なしでご入館いただけます。
展示室内の混雑を避けるため入場制限を行う場合があります。

ご来館のお客様へのお願い

お問い合わせ先
050-5541-8600(ハローダイヤル)
topに戻る