展覧会情報Exhibition Information

開催中の展覧会Current Exhibition

鎌倉時代・建仁元年(1201年)に藤原定家が後鳥羽上皇の熊野参詣に随行した際の自筆の記録「熊野御幸記」を全巻展示いたします。あわせて「大嘗会巻」や「小倉色紙」・「歌切」など館蔵の藤原定家の書を展示いたします。また、近世に小堀遠州などが定家の書を好み、茶道具の銘を和歌から取り、小色紙や箱書を定家様で書いていますが、それらの茶道具も展示いたします。

出品目録

藤原定家筆「国宝 熊野御幸記(くまのごこうき)」を久方ぶりに全巻展示いたします。それに合わせて館蔵品の中から藤原定家の書を選んで展示します。なかでも「大嘗会巻(だいじょうえかん)」は、当館では初公開になります。また、定家の歌切(うたぎれ)消息(しょうそく) 、3幅の藤原定家画像も今回が初公開のものです。年末年始にふさわしく、茶道具やかるた・歌仙絵とともに和歌の世界にも遊んでいただきます。

展覧会の趣旨

当館所蔵の6点の国宝の一つ、藤原定家筆「国宝 熊野御幸記(くまのごこうき)」を、開館20周年の年に久方ぶりに全巻を展示いたします。それに合わせて館蔵品の中から後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)藤原定家(ふじわらのていか)の書を選んで展示しますが、なかでも「大嘗会巻(だいじょうえかん)」は、藤原道長(みちなが)(966〜1027)の時代に活躍した藤原実資(さねすけ)(957〜1046)の日記『小右記(しょうゆうき)』から長和(ちょうわ)元年(1012)の大嘗会の記録を定家が筆写したもので、当館では初公開になります。また、定家の歌切や消息、3幅の藤原定家画像も今回が初公開のものです。以上の作品につきましては、蔵品図録『国宝 熊野御幸記と藤原定家の書』を発行いたします。

定家の書といえば、江戸時代以来、小堀遠州(こぼりえんしゅう)などの茶人の間で「定家様(ていかよう)」が好まれました。それがうかがえる茶道具や消息なども加えて展示し、さらに定家は和歌の世界で六歌仙や三十六歌仙に選ばれますが、年末年始の展覧会らしく、百人一首かるたや歌仙絵(かせんえ)を展示し、最後に重要文化財の東福門院入内図屏風(とうふくもんいんじゅだいずびょうぶ)で締めくくります。

なおこの展覧会は、次の開館20周年特別展「生誕1200年 歌仙 在原業平(ありわらのなりひら)と伊勢物語」とは、和歌と歌仙絵でつながる展覧会といえます。両方の展覧会を観ていただき、日本の古典文学の世界にも親しみを持っていただくことも目的の一つです。

展示構成

展示構成は以下のように展示室ごとのテーマで展示いたします。

展示室1
茶人好みの定家様
展示室2
小倉色紙「うかりける…」
展示室3
如庵 茶道具の取り合わせ
展示室4
国宝 熊野御幸記と大嘗会巻、百人一首かるた
展示室5
定家の古筆切・消息、小堀遠州の定家様
展示室6
三十六歌仙団扇形かるた
展示室7
歌仙絵と東福門院入内図

主な展示作品

展示室1茶人好みの定家様

江戸時代初期の大名茶人小堀遠州(1579〜1647)は、藤原定家の書を好み、茶道具の箱書などに定家風の書、すなわち「定家様」で和歌をしたため、銘を付け、名物茶道具として「次第(しだい)」を整えて後世に伝えました。その遠州に私淑した江戸時代後期の大名茶人松平不昧(ふまい)(1751〜1818)は、遠州が見出した名物茶道具を、東山時代の大名物(おおめいぶつ)に対し中興名物(ちゅうこうめいぶつ)と称し、今日に至る茶道具の評価を定着させました。

[図1-1]の中興名物 瀬戸二見手茶入(銘二見)は、遠州の箱書で、不昧の書状が添っています。不昧の書体はまさに定家様で、遠州の茶入選びの様子と銘の由来が記されています。

[図2]は、同じく中興名物の瀬戸市場手茶入(銘卯花)。これも遠州の箱書ですが、蓋裏に墨書された和歌「うの花のさかりならずば山賎(やまがつ) の かきねに誰か心とめまし」は、ぽってりとした太い墨線と細い墨線の肥痩にリズム感がある定家様の 字姿(じすがた)が、どこか現代の丸文字(まるもじ)にも通じる親しみが感じられます。

展示室2小倉色紙「うかりける…」

小倉色紙(おぐらしきし)は、藤原定家の日記『明月記(めいげつき)』文暦2年(1235)5月に、「嵯峨中院障子色紙形」に天智天皇以下100人の和歌を書いたという記事があり、これが百人一首の小倉色紙とされています。定家の子の為家(ためいえ)の妻の父宇都宮頼綱(よりつな)(蓮生(れんしょう))に依頼されたもので、定家は74歳でした。

当館の小倉色紙[図3]は、百人一首としては74番の源俊頼(としより)の和歌「うかりける人をはつせのやまおろしよ はげしかれとはいのらぬものを」で、この歌は『千載和歌集(せんざいわかしゅう)』に入っています。前田利家・伊達政宗・柳生家を経て三井家に伝わり、18世紀末の松平定信(さだのぶ)編『集古十種(しゅうこじっしゅ)』に三井八郎兵衛所持として図入りで掲載されています。桃山時代以来の伝来の確かさにおいて名品といえます。

展示室3如庵 茶道具の取り合わせ

展示室3は織田有楽斎(おだうらくさい)の茶室「如庵(じょあん)」を写した展示室です。明治41年から北三井家が所有した国宝の茶室で、戦後に名古屋鉄道の所有となり犬山市に移築されました。

ここでは後鳥羽院にちなんだ茶道具の取り合わせです。床には後鳥羽院(ごとばいん)の和歌懐紙(かいし)「古郷の草花」、茶碗は御所丸(ごしょまる)茶碗[図4]、茶器は菊桐蒔絵大棗(きくきりまきえおおなつめ)、茶杓は表千家の逢源斎(ほうげんさい)作竹茶杓(銘束帯(そくたい))、釜は()丸写釜(まるうつしかま)、水指は備前水指(びぜんみずさし) (銘さざれ石)です。

展示室4国宝 熊野御幸記と大嘗会巻、百人一首かるた

ここでは最初に初公開の藤原定家画像を3幅展示します。これらは近代になって冷泉家(れいぜいけ)から譲られたもので、いずれも定家の束帯画像です。まず図5の1幅は、似絵(にせえ)の名手藤原信実(ふじわらののぶざね)(1176〜1265)の筆として伝わっています。信実は定家の甥ですが、絵自体は江戸初期まで下る写しと思われます。この画像に加え、照高院宮道晃法親王(しょうこういんのみやどうこうほっしんのう)(1612〜1679)が写した掛軸[図6]と、土佐光芳(とさみつよし)(常覚) (1700〜1772)が写した掛軸[図7]が3幅1組として伝わっています。

続いて本展覧会のメイン作品、国宝の熊野御幸記[図8]です。建仁元年(1201)10月、後鳥羽上皇の熊野参詣に随行した定家の旅日記です。平成24〜26年(2012〜2014)の修理後としては、久方ぶりの公開となります。

この御幸記にあわせて、この熊野御幸が行われた前年の後鳥羽上皇の和歌懐紙[図9]を初公開します。この翌年に上皇は和歌所を設け、定家らが撰者となり、4年後に8番目の勅撰和歌集「新古今和歌集」が撰進されます。

正面ケースの円山応挙筆若松図屏風をはさんで、対面ケースには当館としては初公開の大嘗会巻[図10]です。 熊野御幸記と大嘗会巻は、今回発行の図録で全巻の翻刻と解説・要約を付していますが、展示でも全巻翻刻文を付します。そのあとに定家撰「百人一首」の冊子本と山口素絢(やまぐちそけん)絵・鈴木内匠(すずきたくみ)文字のかるた[図11]を展示しますが、かるたは絵札と文字札を全部展示します。

展示室5定家の古筆切・消息、小堀遠州の定家様

この展示室では、定家の書と「定家様」の典型としての小堀遠州の書を展示します。

まずは重要文化財の古筆手鑑「高㮤(たかまつ)」に貼られた定家の古筆切(こひつぎれ)4点と、古筆手鑑「筆林(ひつりん)」に貼られた1点に始まり、ケース内壁面には初公開の掛軸6点を展示します。[図12]の定家自詠和歌三首は、もと平戸藩12代藩主の松浦詮(まつらあきら)(1840〜1908)の所持で、昭和6年に新町三井家が入手しています。

後半は小堀遠州の消息で、金森宗和(かなもりそうわ)にあてた消息[図13]など4点に、瀬戸落穂手茶入(せとおちぼでちゃいれ)(銘田面(たづら))と、それに添う遠州の和歌小色紙、そして遠州筆達磨絵賛(だるまえさん)の短冊と、遠州賛の松花堂昭乗(しょうかどうしょうじょう)蔦図(つたず)[図14]です。

展示室6三十六歌仙団扇形かるた

小さな展示室では、三十六歌仙(さんじゅうろっかせん)のかるた[図15]を展示しますが、珍しい団扇形(だんせんがた)の札に絵と和歌を記しています。

展示室7歌仙絵と東福門院入内図

展示室6の三十六歌仙かるたに続き、展示室7でも歌仙絵にこだわります。

3点の歌仙帖のうち、土佐光起(とさみつおき)筆の女房三十六歌仙帖[図16]は周知の名品ですが、他の2点の六歌仙帖と三十六歌仙帖は初公開です。歌仙帖は歌人の絵と和歌色紙がセットになった折本の帖仕立てです。特に三十六歌仙帖は表と裏の両面に貼られています。そのため展示には表か裏どちらか半分しか展示できません。それでも、18人の絵と和歌色紙の展示はそれなりのスペースをとります。今回はそれぞれ表面の展示となります。

[図17]の住吉広純(すみよしひろずみ)(具慶(ぐけい))筆の六歌仙帖は、6人ですから表だけですが、古今和歌集時代の六歌仙(在原業平(ありわらのなりひら)僧正遍照(そうじょうへんじょう)喜撰法師(きせんほうし)大友黒主(おおとものくろぬし)文屋康秀(ふんやのやすひで)小野小町(おののこまち))とは違い、新古今和歌集時代の新六歌仙(藤原良経(よしつね)慈鎮(じちん)・藤原定家(ていか)・藤原俊成(しゅんぜい)・藤原家隆(いえたか)西行(さいぎょう))です。

[図18]の和歌が伝鷹司兼熈(たかつかさかねひろ)筆の三十六歌仙帖は、藤原公任(ふじわらのきんとう)(966〜1041)が選んだ三十六人集とは違い、これも後鳥羽院・定家などが入った新三十六歌仙です。

そして最後は、日本独特の和歌の文化を育んだ宮中内裏への入内を描いた東福門院入内図屏風[図19]で展示を締めくくります。

  • 作品画像

    重要文化財 東福門院入内図屏風(とうふくもんいんじゅだいずびょうぶ) 4曲1双
    江江戸時代・17世紀図19

会期
2025年12月6日(土)~ 2026年2月1日(日)
開館時間
10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日(但し1月5日・12日・26日は開館)、年末年始(12月27日(土)〜1月3日(土))、1月13日(火)、1月25日(日)
主催
三井記念美術館
入館料
一般 1,200(1,000)円
大学・高校生 700(600)円
中学生以下 無料
  • ※70歳以上の方は1,000円(要証明)。
  • ※20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。
  • ※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は( )内割引料金となります。
  • ※障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)。
音声ガイド
音声ガイドでわかりやすく解説いたします。(日本語のみ、貸出料700円)
入館
予約なしでご入館いただけます。
展示室内の混雑を避けるため入場制限を行う場合があります。

ご来館のお客様へのお願い

お問い合わせ先
050-5541-8600(ハローダイヤル)
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