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「超絶技巧!明治工芸の粋」展、「驚異の超絶技巧!明治工芸から現代アートへ」展で多くの観衆を魅了した「超絶技巧」シリーズの第3弾。金属、木、陶磁、漆、ガラスなど様々な素材により、新たな表現領域を探求する現代作家の作品をご紹介いたします。また、これらの作家を刺激してやまない明治工芸の逸品も併せて展覧。進化し続ける超絶技巧の世界をご堪能ください。

出品目録

展覧会の趣旨

三井記念美術館を皮切りに2014年から2015年にかけて全国を巡回した「超絶技巧!明治工芸の粋」展、2017年から2019年に全国巡回した「驚異の超絶技巧! 明治工芸から現代アートへ」展で、多くの人々を魅了した「超絶技巧」シリーズの第3弾。本展では、金属、木、陶磁、漆、ガラス、紙など様々な素材を用い、孤独な環境の中、自らに信じられないほどの負荷をかけ、アスリートのような鍛錬を実践している現代作家17名の作品、64点を紹介します。いずれも単に技巧を駆使するだけでなく、「超絶技巧プラスα」の美意識と並外れたインテリジェンスに裏打ちされた作品をセレクトしました。
また超絶技巧のルーツでもある七宝、金工、漆工、木彫、陶磁、刺繍絵画などの明治工芸57点もあわせて展覧します。
明治工芸のDNAを受け継ぎながら、それらを凌駕するような、誰にも真似できないことに挑戦し続ける作家たちの渾身の作品を、ぜひその目でお確かめください。

現代作家

出品現代作家(五十音順)
青木美歌(ガラス)、池田晃将(漆工)、稲崎栄利子(陶磁)、岩崎 努(木彫)、大竹亮峯(木彫)、蝸牛あや(刺繍)、 小坂 学(ペーパークラフト)、長谷川清吉(金工)、彦十蒔絵 若宮隆志(漆工)、樋渡 賢(漆工)、福田 亨(木彫)、 本郷真也(金工)、前原冬樹(木彫)、松本 涼(木彫)、盛田亜耶(切り絵)、山口英紀(水墨画)、吉田泰一郎(金工)


作品画像
【木彫】前原(まえはら)冬樹(ふゆき)(1962年生まれ)

『一刻』スルメに茶碗
2022年 朴、油彩、墨
スルメ W:57.0cm

とことん一木造(いちぼくづくり)であることにこだわる前原。スルメ本体はもちろん、それを挟む木のクリップと金属のチェーンもすべてひとつの木から彫り出されているため繋がっている。パーツを組み合わせることなく、1本の角材を切り、削り、成形して着色する。

作品画像
【木彫】大竹(おおたけ)亮峯(りょうほう)(1989年生まれ)

月光
2020年 鹿角、神代欅、楓、榧、チタン合金
H:51.0cm

大竹は、動植物など自然の造形物の形を精緻に写しとることで知られる。1年に1度、夜にだけ大輪の花を咲かせる月下美人を表す。47枚の白い花弁には鹿角を使用。驚くべきことに、花器に水を注ぐとこの花はゆっくりと開く。花器は蝙蝠(こうもり)の2枚の羽をモチーフにしている。月下美人の原産国メキシコでは、蝙蝠が受粉媒体、つまり花から花へと花粉を運ぶ存在だからだ。
その蝙蝠羽部分には長い年月、地中に埋まっていた神代欅(じんだいけやき)が用いられている。

作品画像
【木彫】福田(ふくだ)(とおる)(1994年生まれ)

吸水(部分)
2022年 黒檀、黒柿、柿、真弓、朴、苦木、柳、ペロバローサ
W:45.2cm

福田は着色しないことにこだわる。蝶の羽はそれぞれの木材が持つ自然の色を組み合わせ、彼が独自に編み出した立体木象嵌という技法でできている。水滴は驚くべきことにその部分の厚みを残して板を彫り下げ、さらに研磨を重ねツヤをあげて表現している。つまり、蝶が載っている台座の部分は、一木(いちぼく)で彫り出されているのである。

作品画像
【金工】本郷(ほんごう)真也(しんや)(1984年生まれ)

Visible 01 境界
2021年 鉄、赤銅、銀
W:96.0cm

金属を叩いて変形させる鍛金(たんきん)の中でも特に難しいとされる鉄鍛金の技法を駆使し、立体作品を制作する本郷。(からす)を実物大で表した作品だが、実は目に見えない内部の構造まで造り上げている。初めに骨格と筋肉を形にした上から、羽を1枚ずつ重ね付けていったのである。さらに外側からは見えない造形物として、烏が餌と間違えて飲み込んだ異物を銀で表し、体内の胃の部分に置いた。現代人に対して、「見えないもの」へも配慮せよというメッセージにもなっている。

作品画像
【金工】長谷川(はせがわ)清吉(せいきち)(1982年生まれ)

銀製 梱包材
2023年 銀
W:17.5cm

長谷川は尾張徳川家の御用(つば)師を先祖に持ち、明治維新後は茶道具制作に転じた金工師の4代目。板状の銀を雄型と雌型で挟みながら金槌で打ち出して凸部をつくったプチプチ。銀のチカチカした雰囲気がそれと似ているのではないかとの着想から生まれた。梱包材の中に銅の箱が包まれているものの、実際には見ることができない。技術の矛先を、一見くだらないものに向けるが、そこにクオリティーが存在しなければ成立しない。

作品画像
【漆工】樋渡(ひわたし)(けん)(1977年生まれ)

羽根蒔絵大棗
2022年 欅、漆、金、銀、赤銅
H:7.6cm

明治工芸の名工・白山松哉に迫る羽根蒔絵を極めようとしている樋渡。尾長、鳩、烏骨鶏などの羽根や、ふわふわの小さな羽毛まで、すべて研出(とぎだし)蒔絵により表されている。極限まで細く線を描くことで、羽毛のふわふわ感を創出しており、最も細い線は、なんと蒔絵筆の筆先に出た、たった1本の毛先だけを用いる。この凄技で1mmのなかに10本の漆の線を引いてしまう。

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【漆工】池田(いけだ)晃将(てるまさ)(1987年生まれ)

百千金字塔香合
2022年 漆、木曽檜、鮑貝、金
H:7.3cm

切り抜いた貝殻で文様をあらわす螺鈿(らでん)技法により、池田が表現するのは、伝統的な花鳥風月の世界ではなく、数字や光、電気信号といった無機質で現代的な意匠。本作ではピラミッドのような形をした香合に、0〜9の数字が整然と隙間なく置き並べられる。螺鈿の数字には大小5つのサイズがあり、用いられた貝片は3000〜4000個にのぼる。
作品画像

作品画像
【漆工】彦十蒔絵(ひこじゅうまきえ) 若宮(わかみや)隆志(たかし)(1964年生まれ)

「ネジが外れている」モンキー、工具箱、ねじ
2023年 モンキー:麻布、天然漆、銀粉
工具箱・ネジ:ヒバ材、漆、銀粉
工具箱 W:36.6cm

漆芸家・若宮隆志がプロデュースする輪島の漆芸職人集団、彦十蒔絵による「見立(みたて)漆器」。金属製品の質感を漆工技術で再現している。モンキーは乾漆技術を用いて作られており、銀粉を使い金属のサビを表現する。工具箱はヒバ材を用い、漆塗りで仕上げられている。

作品画像
【陶磁】稲崎(いなざき)栄利子(えりこ)(1972年生まれ)

Amrita
2023年 陶土、磁土
サイズ可変

微細なパーツを継ぎ合わせ、極めて繊細な陶磁作品を制作する稲崎。焼成された磁器にもかかわらず、曲げることはもちろん、捻ったり、畳んだりできる。袋状のパーツは、信楽透土(しがらきとうど)と呼ばれる磁土と有色の陶土からなるリングの集合に、テグスを通して巾着のような機能を持たせている。そこに、自作の丸い張り子などを型とし、泥漿(でいしょう)に浸して成形した卵殻状(らんかくじょう)の球体が、こぼれながら包まれている。
「Amrita」は、インド神話で不死の霊薬を意味する。
作品画像

作品画像
【ガラス】青木(あおき)美歌(みか)(1981–2022)

あなたと私の間に
2017年 ガラス、ステンレススティール
H:135cm

粘菌のようなものがガラスのテーブル上に増殖し、その裏からは根が下に向かって伸び、作品自体が空中に浮遊しているようだ。生命の循環や命の繋がりが、繊細極まりない透明ガラスのインスタレーションで表現される。チューブやガラス棒を用いて、卓上のバーナーでガラスを溶かしながら制作していくバーナーワークの技法で作られた作品。

作品画像
【切り絵】盛田(もりた)亜耶(あや)(1987年生まれ)

ヴィーナスの誕生II
2022年 紙
H:146.5cm

切り絵による大作で、2017年に制作し、東京藝術大学の修了制作展で発表された「ヴィーナスの誕生」の続編。ボッティチェリへのオマージュで、モデルの目線やポーズを微妙に変え、樹木が絡みついた空間の中にヴィーナスを象徴する動植物が共存している。理想化された名画の世界を等身大のアジア人として人体を描き、切り抜くことで、現代に生きる身体性を追求し、そこに生じる名画とのズレや価値観のズレを表出する。

明治工芸

作品画像
【漆工】白山(しらやま)松哉(しょうさい)(1853–1923)

羽根蒔絵香合
清水三年坂美術館蔵
φ:5.6cm

明治時代を代表する蒔絵師・松哉の作品のなかでも、繊細さと精緻さを最も極めているのが、鳥の羽根を蒔絵で表した茶器や香合である。大小の羽毛は、金・銀研出蒔絵を中心に、一部に色漆などを交えて表されている。その繊細な表現は、厳選された蒔絵粉、自製の極細の筆といった松哉こだわりの材料や道具や、息が詰まるような超絶技巧によって支えられている。

作品画像
【牙彫】安藤(あんどう)緑山(りょくざん)(1885–1959)


清水三年坂美術館蔵
H:24.5cm

「美術館に果物?! 野菜?!」でおなじみの人間3Dプリンター・緑山が得意とした枝付きの柿。一部が変色し、そり返ったヘタ、皮についた黒いキズなど、細やかな描写が見ごとである。

作品画像
【金工】正阿弥(しょうあみ)勝義(かつよし)(1823–1908)

糸瓜花瓶
清水三年坂美術館蔵
H:33.3cm

銅の合金で糸瓜を象った花瓶。糸瓜は鍛造で、蔓状に絡みつく茎と葉で支えた意匠となっている。正面には力いっぱい足を延ばして飛んでいる蛙が添えられているが、右手の背後の穴から蛇が顔を出して蛙を狙っていることに気が付く。突然現れた蛇に驚いた蛙が慌てて逃げているさまが描写されているのである。

作品画像
【七宝】並河(なみかわ)靖之(やすゆき)(1845–1927)

草花図花瓶
清水三年坂美術館蔵
H:31.0cm

並河の七宝は、その細やかな装飾ゆえ比較的小品が多い。しかし、本作は30cmを超える大作であり、類例は僅かといわれる。漆黒の釉を背景に、紅葉や金木犀、芙蓉、萩、百合、菊など色鮮やかな植物が配されている。口縁と底部の覆輪(ふくりん)は銀でなく、並河が晩年に使用し始めたといわれる赤銅が選ばれ、黒の釉薬との一体感がみられる。

会期
2023/9/12(火)〜11/26(日)
開館時間
10:00〜17:00(入館は16:30まで)
休館日
月曜日(但し9月18日、10月9日は開館)、9月19日(火)、10月10日(火)
主催
三井記念美術館、朝日新聞社
協力
清水三年坂美術館
監修
山下裕二(明治学院大学教授)
企画協力
広瀬麻美(浅野研究所)
入館料
一般 1,500(1,300)円
大学・高校生 1,000(900)円
中学生以下 無料
  • ※70歳以上の方は1,200円となります。(要証明)
  • ※20名様以上の団体の方は( )内割引料金となります。
  • ※リピーター割引:会期中一般券、学生券の半券のご提示で、2回目以降は( )内割引料金となります。
  • ※障害者手帳をご呈示いただいた方、およびその介護者1名は無料です(ミライロIDも可)。
入館
予約なしでご入館いただけます。
展示室内の混雑を避けるため入場制限を行う場合があります。

ご来館のお客様へのお願い

お問い合わせ先
050-5541-8600(ハローダイヤル)
巡回先
岐阜県現代陶芸美術館 2023年2月11日(土・祝)〜4月9日(日)【終了】
長野県立美術館 2023年4月22日(土)〜6月18日(日)【終了】
あべのハルカス美術館 2023年7月1日(土)〜9月3日(日)【終了】
富山県水墨美術館 2023年12月8日(金)〜2024年2月4日(日)
山口県立美術館(予定) 2024年9月12日(木)~11月10日(日)
山梨県立美術館(予定) 2024年11月20日(水)~2025年1月30日(木)
※出品作品は会場により一部異なります。
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